1種目に絞るのはまだ早い。週の練習時間は「年齢の数字」を超えない
早くから1種目に集中させた子ほど伸びる——という直感は、データではむしろ逆に出ています。
「全国に行かせたいなら、早く1本に絞るべきでは」——これは保護者から最も多い問いのひとつです。しかしスポーツ医学の領域では、早期専門化(early specialization)が、けが・燃え尽き・競技離脱のリスクを高めるという報告が積み重なっています。米国小児科学会(AAP)は2016年の臨床報告で、少なくとも思春期までは複数の競技に取り組むことが、けが・ストレス・燃え尽きの可能性を下げるとしています。
理由は2つあります。ひとつは負荷の偏り。同じ動作を反復し続けると、同じ組織にだけ疲労が蓄積します。もうひとつは運動の引き出し。走る・跳ぶ・投げる・切り返すという基礎動作の幅は、この年代で作られ、後からは作りにくい。テニスの子が陸上のダッシュ練習をすることは、遠回りではなく土台の拡張です。
実務的な目安として引用されるのが「1週間の組織的な練習時間が、年齢の数字(時間)を超えないようにする」という考え方です。12歳なら週12時間まで。練習時間が年齢を超えていた子どもで、使いすぎによるけがが多かったという研究に基づくものです。ただしAAP自身も、この目安は今後の長期研究で確かめる必要があるとしています。厳密な閾値というより、量を客観視するための物差しとして使ってください。
もうひとつ、意外に効くのが「休み」です。AAPは、その競技から週に1〜2日離れること、そして年間で合計3か月(1か月単位で)その競技から離れる期間を作ることが、けがや燃え尽きの可能性を下げるとしています。
ご家庭の3人(陸上・サッカー・テニス)のように種目が分かれている環境は、この観点ではむしろ理想的です。兄妹で互いの練習に混ざるだけで、自然にマルチスポーツの状態が作れます。
親が気をつけること
絞る決断は中学の後半でも遅くありません。今絞るメリットは、大人の安心以外にほとんどありません。
出典・参考
- American Academy of Pediatrics(Brenner, 2016)|Sports Specialization and Intensive Training in Young Athletes. Pediatrics 138(3) https://publications.aap.org/pediatrics/article/138/3/e20162148/52612/Sports-Specialization-and-Intensive-Training-in
- Jayanthi et al.(2015)|Sports-Specialized Intensive Training and the Risk of Injury in Young Athletes: A Clinical Case-Control Study. Am J Sports Med 43(4) https://www.scirp.org/reference/referencespapers?referenceid=3209587
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